ヴェネツィア国際映画祭では1984年に国際批評家週間(SIC)が創設されました。その後、2016年SICは、イタリア映画批評家連合とチネチッタの協力のもと、SIC@SIC(イタリア短編映画@国際批評家週間)を開始しました。これは、長編映画未発表のイタリア人監督による短編映画7作品によるコンペティションで、すべての作品が世界初上映されます。
今回、昨年のSIC@SIC2022から5作品を日本語字幕付で紹介します。コンペに選出された7作品から4作品と、コンペ外の1作品です。
今回上映する5つの短編映画をつなぐ細い糸は、変貌、空間と時間における跳躍、そして時には徐々に、時には突然に訪れる変化と言えるでしょう。たとえば、変装ゲームや、髭を鉛筆で描くことによる女性から男性への変化、ある物語が生存のための厳しい戦いという生々しいイメージを通じて観客にもたらす、遠いディストピア的な未来から、時間としては離れていても、技術的には進んだ「先史時代」への驚くべき跳躍。あるいは、田舎のきれいな少女から雑誌の表紙を飾るような美人への変身。変化は予期されるだけで、実際に実現するかどうかわからないまま終わる作品もあります。
*日本語字幕付
なお、上映前には押場靖志氏(学習院大学講師)による解説があります(20分、日本語のみ)
お申し込み:こちらをクリックしてください。
お問い合せ:eventi.iictokyo@esteri.it
上映作品
アルベルティーヌ、どこ?
Albertine, where are you?
監督:マリア・グイドーネ/ 2022/ イタリア/ フランス語・英語/ 20分
アルベルティーヌはマルセルの愛の対象であり、彼は彼女を得るためには何でもする。これは愛と所有と嫉妬の物語である。だが同時に、傲慢で不遜な自由の解放と回復の物語でもある。
ノストス
Nostos
監督:マウロ・ズィンガレッリ/ 2022/ イタリア/ 台詞なし/ 15分
ディストピア的な世界を旅する二人。そこでは、人間とテクノロジーの関係が人間の現代、そして未来についての省察を生み出す。
ハッピー・バースデー
Happy Birthday
監督:ジョルジョ・フェッレーロ/ 2022/ イタリア/ ロシア語・英語/ 20分
*コンペ外
2022年2月28日、モスクワ。エレクタ(ロシア人)とアニータ(アルゼンチン人)の二人の主人公は環境運動家のポッドキャストを通じてオンラインで出会う。そこで、Z世代の迷いと困難に声が与えられる。
残されたものたち
Resti
監督:フェデリコ・ファディーガ/ 2022/ イタリア/ イタリア語/ 13分
ある若者たちのグループに起こる出来事を描いている。彼らは休暇へと向かう旅のさなか、荒廃した場所に立ち寄り、そこで一夜を過ごすことになる。
ミス・イタリア
Reginetta
監督:フェデリコ・ルッソット/ 2022/ イタリア/ イタリア語/ 15分
1950年代の南イタリア。リゼッタの美しさは貧困から脱出するための希望である。しかしそのために人々は、おそらくは到達しないだろう「もっと、もっと」を追い求め、残酷な行為を実行に移していく。
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押場 靖志 Oshiba Yasuji
イタリア語教育、イタリア映画研究。東京外国語大学でイタリア語を学び、現在は学習院大学、法政大学講師。朝日カルチャーセンターでは長年「映画で楽しむイタリア語」を担当、イタリア映画のセミナーを不定期で開講。訳書にはマルチェロ・マストロヤンニ『マストロヤンニ自伝』(小学館)、トゥリオ・ケジチ『フェリーニ、映画と人生』(白水社)など。ブログは「雲の中の散歩」。