さる7月6日、映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネ氏が91歳で亡くなりました。それ以来、世界中で哀悼の意が示されています。モリコーネ氏は、セルジオ・レオーネ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ジュゼッペ・トルナトーレ、ブライアン・デ・パルマ、クエンティン・タランティーノといった監督の作品の映画音楽を担当した作曲家として有名ですが、ポップ・ミュージックから前衛音楽に至るまで幅広いジャンルで多くの傑作を残しました。
イタリア文化会館では、モリコーネ氏を偲び、東京在住のピアニスト、フェデリコ・イアコブッチ氏に作品をピアノで演奏していただき、7月29日(水)午後7時からFacebookとInstagramで配信することにしました。
イアコブッチ氏は、作曲家、指揮者でもあり、かつてローマの国立音楽院で学んでいた時、モリコーネ氏と面識を得ました。
今回、数多くの映画音楽の名作のなかから、下記の作品を演奏します。
プログラム
「ミッション」(ローランド・ジョフィ監督作品)より
滝
ガブリエルのオーボエ
「続・夕陽のガンマン」(セルジオ・レオーネ監督作品)
「荒野の用心棒」(セルジオ・レオーネ監督作品)
「殺人捜査」(エリオ・ペトリ監督作品)
「夕陽のギャングたち」(セルジオ・レオーネ監督作品)
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」(セルジオ・レオーネ監督作品)
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(セルジオ・レオーネ監督作品)より
デボラのテーマ
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
「海の上のピアニスト」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品)より
愛を奏でて
「死刑台のメロディ」(ジュリアーノ・モンタルド監督作品)より
勝利への賛歌
「ニュー・シネマ・パラダイス」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品)より
Nuovo Cinema Paradiso
Childhood and Manhood
Love Theme
7月29日(水)午後7時から配信します。
Facebookでフォローする場合は、上記の配信時間にこちらをクリックしてください。
Instagramの場合は、イタリア文化会館をフォローします。ライブ配信が始まるとタイムライン上部のストーリー表示部分にライブ配信機能専用のアイコンと「LIVE」の文字が表示されたアイコンが表示されますので、タップすると視聴が始まります。
お問い合せ: eventi.iictokyo@esteri.it
※ ライブ配信は終了しましたが、演奏会の模様はこちらからご覧いただけます。
フェデリコ・イアコブッチ Federico Iacobucci
1975年10月13日生まれ。作曲家、指揮者。
幼少から音楽に親しみ、クラシック及びジャズピアノを学ぶ。ジャズをローマのサン・ルイス音楽院にて、ステファノ・サバティーニ、ブルーノ・トンマーソ、ジャヴィエ・ジロット等に師事。その後、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院にて、作曲、合唱指揮を主席で卒業。
2001年、ローマのヴァッレ劇場で、モラヴィア財団主催のアルベルト・モラヴィア賞受賞式での作曲及び演奏を任される(ピエラ・デッリ・エスポスティ、アルベルト・ロッサッティ、セレーナ・ダンディーニと共演)。その後も、イタリアで劇場やライブ、ビデオプロダクション等に数々の楽曲を提供。レンツォ・アロニカ演出のニコロ・ピッチンニのオペラLa bella veritàで、チェンバロを演奏し、指揮をした。また、ローマのサン・ベッラルミーノ教会で合唱指揮者を務めた。
2010年には、横浜市立大学物理学部にて20世紀の現代音楽についてセミナーを行う。
その後もジャズからポップスまで様々なジャンルのミュージックシーンに楽曲を提供。
2018年より、東京のアンドビジョン・インターナショナル・ミュージック・スクールでクラシックピアノ、ジャズピアノ、理論を教える。
2017年、在京フランス大使館でのミュオグラフィ国際会議で自作ミュオグラフィシンフォニーについてレクチャーし、披露する。2018年、多摩美術大学美術館でのAnswer from Universe (宇宙に訊ねよ)展でも同楽曲を披露し、同年12月にはイタリア文化会館のアニェッリホールで演奏された。2020年1月には大阪のザ・シンフォニーホールでも演奏された。
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エンニオ・モリコーネ先生の思い出
フェデリコ・イアコブッチ
私は、かつてローマのサンタ・チェチーリア音楽院で学んでいた時にエンニオ・モリコーネ氏と出会いました。モリコーネ氏が作曲科の学年末発表会に姿を現すのは、そう珍しいことではありませんでした。彼はいつも学生たちに関心の目を向けていました。そんななか、私はモリコーネ氏にインタビューをする機会を得ました。当時、私は級友たちと、音楽院の学生や教師に向けた校内誌「クラスター」(Cluster)を発行しており、そこに掲載するためでした。モリコーネ氏は私たちを自宅に招き、ヴェネツィア広場に面したとても美しい広々とした部屋に案内してくださいました。私はすぐに、モリコーネ氏が教養豊かで慧眼をもち、活力にあふれ、音楽的創造力に満ちていることに加え、とても親切で偉ぶるところのない人だということがわかりました。結局、長いインタビューとなりましたが、とても楽しい時間で、彼はさまざまなエピソードを話し、そして、ピアノの前に座って、作曲の仕方について説明をしてくれました。モリコーネ氏は、「絶対的な」音楽と、映画音楽や軽音楽の間には深い関係があると語りました。前者の実験的とも言える試みの多くは、後者のなかに、より広い聴衆に向けてシンプルな形となって見いだせるのだと。その極意は、作曲の方法という点ではいつも同じですが、そのアプローチは作品ごとに毎回異なっていたということです。それは、並行する2本の道が、つねに浸透しあうなかで、明確な境界線をもちながらも、けっして対峙することはないかのようです。
マエストロ、ありがとう。私たちローマの若い作曲家にとって、あなたは先導者であり大いなる憧れでした。あなたがいなくなり、とても寂しく思います。でも、あなたの音楽は永遠に私たちのなかで生き続けます。