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ヴァルテル・マリオッティ 講演会「亀裂に住まうー世界の不完全な美を再生する」

Mariotti ridotto sito

ヴァルテル・マリオッティは、建築とデザインの分野で世界的に高い評価を受けるイタリアの雑誌『Domus』の編集長です。本講演会では、ハイデガーの「ゲシュテル(Gestell)」(技術が世界を単なる利用可能な資源へと還元してしまう視点)を起点に、都市空間が機能的な容器へ、モノが使い捨ての商品へ、アイデアが消費される知的プロダクトへと変わっていく現代の状況を捉え直します。

そのうえで、ジュゼッペ・トゥッチやフォスコ・マライーニ、さらに川端康成、大江健三郎、三島由紀夫、村上春樹といった日本の美意識を体現する思想家・作家たちの思考に触れながら、「金継ぎ」という比喩を通して新たな視点を提示します。西洋文化が「破損」を欠陥や廃棄の対象と見なしてきたのに対し、金継ぎはそこに可能性を見出します。壊れた痕跡は隠されるのではなく、唯一無二の美として際立たされるのです。

この考え方は、ハイデガーが語った「詩人的に人間は住む(dichterisch wohnet der Mensch)」という呼びかけとも深くつながっています。住まうとは、単に空間を占有することではなく、モノや場所の「在り方」に心を配ること。その実践がここでいうRE-DESIGNです。歴史や不完全さ、時間の痕跡を尊重しながら行う再生の試みです。

侘び寂びの思想が示すように、美は完璧さではなく不完全さの中に宿ります。荒廃した都市空間は、歴史の重なりを生かすことで再生でき、使い込まれたモノは、意識的な修復によって新たな価値を得ます。一見時代遅れに見えるアイデアも、創造的な統合によってよみがえるのです。

さらに、日本の「もったいない」という価値観もこの思想と響き合います。再生とは、すでにあるものの価値を認め、消費と絶え間ない置き換えの論理に抗うこと。倫理的かつ美学的な意味でのリデザインは、現代社会の亀裂を否定するのではなく、それを持続可能で本物の美へと変えていくための視点と実践を私たちに与えてくれます。

(日伊同時通訳付)

 

日時:2026年1月26日(月)18:30 (開場18:00 )
会場:イタリア文化会館 ホール
主催:イタリア大使館、イタリア文化会館

お申し込み:こちらをクリックしてください

 

ヴァルテル・マリオッティ Walter Mariotti
2017年より『Domus』の編集長を務め、編集構想から制作、メディア全体の発展までを統括している。シエナ大学で理論哲学を専攻し、学位を取得。ハーバード大学ミンダ・ド・グンツブルグ欧州研究センター、ワシントンの国立公文書館、ボストンのジョン・F・ケネディ大統領図書館、モンダドーリ・アーカイブ、シエナ市立図書館などと協働してきた。シエナ外国人大学およびサンマリノ大学で教鞭を執ったほか、テヘラン大学、カイロ大学、ハーバード大学でも講義を行っている。現在はミラノのIULM大学でコミュニケーション理論を教えている。月刊誌『Campus』『Class』の編集長を務め、21世紀における社会と文化の変容をテーマとしたメディアを数多く立ち上げてきた。RAIでは「Bazaaar」「Dodicesimo Round」の企画・司会を務め、「Excalibur」にも参加。現在は『Domus』の編集長としての活動に加え、『DomusAIR』『World Design』『DLUX』を創設し、ディレクターを務めている。