展覧会 ジョヴァンニ・ダ・ノーラ「受胎告知」 ―再発見されたイタリア・ルネサンスの傑作―
本展覧会は、イタリア・ルネサンス期の彫刻家、ジョヴァンニ・ダ・ノーラ作の卓越した2体の木製彫刻「聖母マリア像」と「大天使ガブリエル像」に対する修復と再評価の過程を紹介するものです。展示を通して、これらの彫像の歴史や修復過程、芸術的背景、さらに彫像が元々設置されていた主祭壇があるブッチーノのアンヌンツィアータ教会の内観をご覧いただきます。
1526年に制作されたこの2体の像は、16世紀初頭のナポリ派の傑作とされています。しかし時間の経過とともに、湿気や木材の虫食い、不適切な修復やニスの重ね塗りなどにより、彫像は深刻なダメージを受けました。
本展では、修復を終えた彫像に加えて、ジョヴァンニ・ダ・ノーラの弟子の作とされる木製の天蓋、19世紀に描かれた聖歌隊席や天井の装飾、多彩な大理石による祭壇などアンヌンツィアータ教会についてもご紹介します。これは、ナポリ・ルネサンスを代表する彫刻家の一人の業績を再発見する貴重な機会となっています。
このプロジェクトは、彫像とそれらが設置されていた環境とをデジタルでも保存し、世界的に届けることを意図して始まりました。そのために、仮想現実(VR)と人工知能(AI)を組み合わせた没入型体験が企画され、来場者が彫像とその歴史についての臨場感ある体験をできるようになりました。彫像が置かれていたルネサンス様式の木製祭壇は、写真による測量やスキャン、長年の研究をもとに3Dで再現され、VRヘッドセットなどの機器で鑑賞できます。
さらに、歴史的・芸術的資料をもとに設定された多言語対応のバーチャルアシスタントが、来場者と自然な会話を交えながら、相手に応じた情報提供を行い、画像やアニメーション、パーソナライズされた解説により展示体験をより充実したものにします。
概要
会期:6月16日(月)~27日(金)10:30~17:30 (休室日:土曜日、日曜日)
会場:イタリア文化会館エキジビションホール
入場無料
お問い合せ:eventi.iictokyo@esteri.it
主催:イタリア文化会館、Senior S.r.l.
協力: Coesione Italia 21-27、ヨーロッパ連合、マルケ州、イタリア文化省 サレルノ・アヴェッリーノ地域考古学・美術・景観保護局、イタリアン・トレード・エイジェンシー、Cartusia S.r.l.、Travel Verse S.r.l.
会期中のイベント
(1)開会式
日時:6月16日(月)17:30(開場17:00)
お申し込み:こちらをクリックしてください。
(2)シンポジウム「ジョヴァンニ・ダ・ノーラの「受胎告知」-ヴァーチャルリアリティとAI」
日時:6月19日(木)18:30(開場18:00)
シンポジウムでは3人の講演者がそれぞれ特定の側面に焦点を当てて講演を行います。
まず早稲田大学教授 児嶋 由枝氏が、作品の歴史的・芸術的背景について概説します。
続いて技術者アントニオ・アメンドラ氏が、修復プロジェクトとその作業について説明し、作品の修復過程に関して技術的な視点から講演します。
最後に、イヴァン・ジョヴァンニ・アッレーヴィ氏が人工知能および新しい技術の役割について掘り下げ、これらの革新的なツールが修復や保全の分野をどのように変革しつつあるかについて講演します。
(日伊逐次通訳付)
お申し込み:こちらをクリックしてください。
児嶋 由枝
早稲田大学文学部教授。同大学で美術史を専攻、同大学院を修了後、イタリア国立ピサ高等研究院にて博士号を取得。研究テーマは、イタリアの中世およびルネサンス美術で、北イタリアにおけるロマネスク美術とゴシック美術、16世紀から19世紀にかけての日本におけるヨーロッパ・キリスト教美術の受容を専門とする。
主な著作にStoria di una cattedrale: il Duomo di San Donnino a Fidenza(Edizione della normale, 2006年)、論文にReproduction of the Image of Madonna Salus Populi Romani in Japan(2014年)がある。
また、長崎のイエズス会画家ジョヴァンニ・コーラと画学舎の役割、そして日本・マカオ・マニラの美術面でのつながりについても研究している。
イタリア美術学会、国際中世美術センターなどの国際的な学会の会員であり、2013年にはイタリアのフィデンツァ市から中世イタリア美術研究への貢献を認められ名誉市民の称号を授与される。
イヴァン・ジョヴァンニ・アッレーヴィ
IT業界に25年以上にわたって従事。自身の最初のスタートアップ企業ATS Sncは、スポーツサイトの開発から始まったAllix Srlに統合され、2008年初頭、Allixは新興市場であるIoT分野において新たな大規模プロジェクトを立ち上げた。
こうした活動に続き、車両や人の位置情報の追跡、公共空間の照明の遠隔制御を行うための特別なプラットフォームの開発に取り組む。うちの2つのプロジェクトは、ESNC(European Satellite Navigation Competition)コンクールで入賞。
2017年末にはAllix Srlの一部がLED分野で知られるイタリアの大手企業TCI Srlに買収された。
2016年には、スタートアップ企業Senior Srlを設立し、VR/AR(仮想現実/拡張現実)を専門とする部門を立ち上げる。そのサービスでは、定評のあるセンサーシステムやAIによるデータ処理システム、高品質なグラフィックスが組み合わされている。
2023年2月からはTravel Verse Srlの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)として、観光向けVRアプリケーションの開発チームを指揮している。
アントニオ・アメンドラ
Senior Srlプロダクトマネージャー。航空宇宙・航空工学を学び、エンジニアとして20年以上にわたりこの分野に携わる。観光分野に関連する支援制度に関する科学コミュニティのメンバーとして積極的に活動しており、ブルーエコノミー(持続可能な海洋経済)の推進と発展のために、国際的なミッションに講演者・コンサルタントとして参加。
2017年以降、ブルーエコノミー分野で活動する2つの企業に出資し、若手起業家のメンターを務め、会議やテクノロジースタートアップのコンサルタントとしても活動。
ブルーツーリズム分野における革新的なイタリアのスタートアップ企業Boatsandgoの共同創業者であり、プロジェクトマネージャーを務める。様々な国際的なプロジェクトに活躍の場を広げており、同社は数々の受賞をしている。
2023年には、都市水上交通の課題に取り組むスタートアップ企業WaterWaysを設立。
2022年から2023年にかけては、ビジネスモデル、プロジェクトマネジメント、パブリックスピーキングに重点を置いたスタートアップ企業のコンサルタントも務める。
その多岐にわたるキャリアを通じて、観光分野で多数の業績を持つ。