指揮者ガエタノ・デスピノーザ氏監修によるイタリア文化会館コンサートシリーズ第17弾は、イタリアの現代音楽作曲家サルヴァトーレ・シャリーノ氏の作品演奏会です。本演奏会と11月13日に行うシャリーノ氏による講演会は「サルヴァトーレ・シャリーノ in Giappone 2024!」と題するプロジェクトの一環として開催します。
このプロジェクトの発案者で、演奏会を指揮する杉山洋一氏は今回のプロジェクトの意図について次のように述べています。
「今回のサルヴァトーレ・シャリーノ氏招聘では、長きにわたる氏の音楽活動全体を俯瞰しながら、現在のシャリーノ氏の音楽がどのように培われてきたのかを浮き彫りにしたい。
1967年、まだ20歳のシャリーノは松尾芭蕉によるソプラノと12楽器のための「あかあかと」を平山美智子のために書いた。自宅の巨大な図書室の一角がすべて日本文学と美術、芸術などの専門書で占められているほど日本文化に傾倒しているシャリーノが、その後、どのような変遷を経て、現在の作品へ辿り着いたのだろうか。演奏会では、初期からほぼ10年ごとの作品を並べる。過去の引用、印象的な特殊奏法、沈黙……それらが時代の変遷とともに、すこしずつ展開してゆくのがわかるだろう。
演奏会後半におく2つの近作、まず「5奏者のためのアリオ―ソ」は、シャリーノが半世紀以上をかけて磨き上げてきた、深く、そして神秘的な音の宇宙の総括の姿であり、「1通の手紙と6つの唄」では、和泉式部の和歌や、菩提達磨の「血のめぐりについての説話」をもとにシャリーノ自身が綴ったテクストによる2つの唄など、声に対してのさまざまなアプローチが見てとれる。
作品を通してシャリーノの足跡を辿り、また、長年教育者としても貢献している氏から若き音楽家、作曲家たちへのさまざまなアドバイスを聴衆も含めて共有することで、今回の訪日は、より一層多角的で意義深いものとなるに違いない。」
2024年11月15日(金)18時30分(開場18時)
イタリア文化会館ホール
主催:イタリア同時代芸術を広める会、イタリア文化会館
助成:公益財団法人野村財団
制作:東京コンサーツ
お申し込み:こちらをクリックしてください
お問い合せ:eventi.iictokyo@esteri.it
※このコンサートはサントリー芸術財団佐治敬三賞推薦コンサートです。
プログラム
夜の(1971)ピアノ
De la nuit
夜の果てで(1979)ヴィオラ
Ai limiti della notte
目覚める前に死なせて(1982)クラリネット
Let me die before I wake
さようなら、風の家よ(1993)フルート
Addio case del vento
風が運んだ、地球の裏側からの手紙(2000)フルート
Lettera degli antipodi portata dal vento
1本弦の幻想曲(2009)ヴァイオリン
Capriccio di una corda
風もなく(2019)チェロ
Senza vento
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5声のアリオーソ(2018)フルート、クラリネット、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ
Arioso a 5
1通の手紙と6つの唄(2021)フルート、クラリネット、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ソプラノ
Una lettera e 6 canti
演奏者
指揮:杉山 洋一 Sugiyama Yoichi
村上 景子 Murakami Keiko(フルート)
田中 香織 Tanaka Kaori(クラリネット)
黒田 亜樹 Kuroda Aki(ピアノ)
アルド・カンパニャーリ Aldo Campagnari(ヴァイオリン)
般若 佳子 Hannya Yoshiko(ヴィオラ)
北嶋 愛季 Kitajima Aki(チェロ)
薬師寺 典子 Yakushiji Noriko(ソプラノ)
プロフィール
サルヴァトーレ・シャリーノ Salvatore Sciarrino
1947年イタリア・シチリア島、パレルモ生まれ。
音楽学校に通わずに独学で12 歳から作曲を始め、1962 年に最初の公開コンサートを開いた。1983 年からウンブリア州のチッタ・ディ・カステッロに居住。その音楽は異なる聴き方や感情的認識を促す独自の要素を持ち、40 年以上にわたり驚異的な創造的発展を遂げてきた。これまで、スカラ座をはじめとする劇場や楽団、音楽祭からの作品委嘱も数多く、作品はRicordi 社およびRAI Trade 社から出版され、リリースされたCD は100 枚以上に及ぶ。オペラのリブレットや様々なジャンルの記事の執筆、教育者としても活躍し、ボローニャ市立歌劇場の芸術監督も務めた。ザルツブルク音楽賞(2006)やヴェネツィア・ビエンナーレから生涯功労賞の金獅子賞(2016)を受賞するなど、数々の功績が認められている。2024年10月には神奈川県民ホールにて「ローエングリン」(1982-84)、「瓦礫のある風景」(2022)が日本初演される。
杉山 洋一 Sugiyama Yoichi
1969年東京生まれ。作曲を三善晃、フランコ・ドナトーニ、サンドロ・ゴルリに、指揮をエミリオ・ポマリコ、岡部守弘に師事。作曲家としてミラノ・ムジカ、ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、国内外より多くの委嘱を受ける。指揮者として東京都交響楽団、アレーナ・ディ・ヴェローナ、ボローニャ・テアトロコムナーレ交響楽団など日欧で多くのオーケストラ、アンサンブル、オペラを指揮。
オーガナイザー、プロデューサーとしての活動も活発で、高橋悠治作品演奏会I「歌垣」(2018)、同II「般若波羅蜜多」(2019)、松平賴暁のオペラ「The Provocators~挑発者たち」(2018)、フェニーチェ堺のオープニングシリーズ「武満徹ミニフェスティバル」(2019)があり、いずれも指揮も担当している。
作曲家として、第13回佐治敬三賞、第2回一柳慧コンテンポラリー賞受賞。指揮者として2018年芸術選奨文部科学省大臣新人賞受賞。
1995年にイタリア政府から作曲奨学金を得て以来ミラノ在住。現在はミラノ市立クラウディオ・アッバード音楽院で教鞭を執る。